小学校入学後落ち着いてきた時期から見られる発達の心配
入学シーズンも終わり、あちらこちらで真新しいランドセルを背負った新1年生が歩いていますね。小学校生活に慣れた頃、5,6月あたりから、学校生活の様子を見ていると我が子の発達に心配な事が出てきて、相談機関に行くケースが多く見られます。小学校に入学する前は全く普通に幼稚園や保育園生活を過ごせていたのに、なぜ入学して小学校生活に慣れた頃に、発達の面での心配が出てくるのでしょうか?
それらの心配が一概に発達障がいとは言い切れません。ではその心配はどのような要因から来ているかを考えてみます。
・今まで経験しなかった活動が増えた
・幼稚園や保育園よりも大きな集団の中で過ごすようになり、集団行動が増えた
・遊びを通じての活動から学習という活動に変わったことで、自分で考えて答えを導く活動が増えた
・自主学習をすること、自分から何かの活動をすること等、自主性を求められることが増えた
これらは、未就学の時には、ほとんど経験してこなかった事か、または周囲の大人が手助けをしてくれることで本人が出来るように事前に準備をしてくれていた事でもあります。これらの活動はどの子供も初めての経験で戸惑いながらも経験値を積みながら出来るようになっていくものです。しかし中には何度経験しても失敗を繰り返し、やり方のコツがつかめず、集団の中で遅れてしまう子供もいるのです。周囲の大人はそんな子供の様子を見て発達障がいを疑うこともあります。保護者も心配になり、相談機関に行く時期がちょうど学校に慣れた頃なのです。相談機関では以下のような相談が多く聞かれます。
・皆が出来ているのに、我が子はまだできないように見える
・何度も同じ間違いを繰り返し学習できてない気がする
・今まで気づかなかったが、落ち着いて座っていることが出来ていないようだ
・学習について行けていない
・先生の話を聞けなかったり、板書や書き写しが出来ない
・一斉の支持が聞こえていないように感じる
このようなことで相談機関を訪れるケースが多いようです。
また、入学後1,2か月は学校生活にはすっかり慣れた時期だからこそ、学習面や集団生活の中で、目立った遅れが見られたりもします。
相談機関は各自治体に設置された発達支援センターなどがあります。また、民間の委託で発達検査を受けている機関もありますが、どの自治体も数に限りがあるので、夏休みまでは予約でいっぱいという所もあるのです。
学習障がいは入学後でも見つかりにくい
学習障がいは、入学後に見つかる発達障がいです。就学以前では学習の機会は多くはないため、なかなか見つけにくいのですが、入学後でも学習障がい自体を早期に見つけることはなかなか難しいとも言われています。
ひらがなの読み書きができない、計算が苦手と言っても、本人が分かるツールを使ってゆっくり覚えていくことで、最初はスモールステップでも覚えだしたらメキメキ上達したという子もいます。苦手意識や初めての事への戸惑いがあり、そこからゆっくり覚える子も多いので一概に学習障がいと決めつける事は危険でもあります。
では学習障害とはどのようなことを言うのでしょうか?
【特性】
「聞く」「話す」「読む」「計算する」「推測する」などの能力に困難さが生じることを言います。人によって症状に特性の現れ方がはっきりしない人も多く診断が難しい症状です。
知的には遅れはないものの、読むこと書くこと計算すること推論することなど、ある特定の分野だけが苦手で何度覚えようとしても覚えられなかったり、同じ間違いを繰り返したりと、習得できないことへ苦しむことが特徴として見られます。努力することを怠っている、何度も経験したら出来るようになる、頑張りが足りないなどと思われがちですが、本人は一生懸命に努力していることも気づかれにくいので、誤解を受けやすいこともあります。
【読字障がい】
・音読が遅く読み間違えがあり、読みながら文章全体の意図をつかむことが出来ない
・言葉の意図をつかんだりや文章全体を理解をすることが難しい
【書字障がい】
・バランスよく文字を書くことが苦手
・文章を書くときに助詞などをうまく使いこなすことが難しい
・板書などの文字の書き写しが出来ない
・頭で考えた内容を文字に起こすことが難しい
【算数障がい】
・数の概念が理解しにくく数列などの規則性を理解できない
・計算を習得することが困難
・文章題を理解することが難しい
・図形などの推論をして答えを導くことが出来ない
これらすべてが学習障害とは言い切れませんが、長い期間学習してきても習得が困難な場合は学習障害を疑われることが多くあります。
学習に困難さを感じて、学習障がいと診断されたら、放課後等デイサービスなどに通い療育を受けることで、少しずつに苦手な分野が出来るように対応することが大切です。全くできないのではなく、通常の学年や年齢よりもゆっくりさがあるだけなので、積み重ねと繰り返しの学習で出来ることは増えてきます。
放課後等デイサービスの中には塾のように学習に困難さを抱えた子供たちのための学習支援に特化している事業所もあります。本人に合ったわかりやすい学習方法を一緒に考えてくれ、何処で躓いているかを見極め、そこから『やり直し』をしてくれます。
授業中の立ち歩きと集団生活
入学後に今まで気にならなかった『授業中の立ち歩き』が見られ発達障がいを疑われる子もいます。就学前は長い時間椅子に座って集団活動をする機会はほとんどなかったため入学後の姿に保護者も戸惑います。入学後に授業が始まり長い時間座っている時間はどの子にとっても初めは疲れることです。授業中に立ち歩きが見られる子の多くは、集中力が持続しないことや、行動の抑制ができにくいのです。動き回ることで安心感や気持ちの切り替え、発散を行っている子もいます。発達に心配の見られない子でも最初は慣れない集団生活で立ち歩く子もいます。しかし、少しずつ学校生活に慣れてくると、何人かいた立ち歩く子も次第に少なくなっていきます。それでも立ち歩きを繰り返している子は発達の面で集中力が持続しにくい子かもしれません。
DSC_0527
また、集団生活に慣れることで、今まで多少の遅れを取っていた子も、慣れてくると次の見通しが持てるため、スムーズに行動できるようになっていきますが、発達障がいを疑われる子は、始業のチャイムが鳴っても気づかない、先生が口頭で話したことを忘れるか理解していない、移動教室が分からない等、日々の流れをなかなか習得できず遅れをとってしまうことが多いのです。もし、そんな子供への配慮をするとしたら、
※一斉指示ではなく個別に本人だけに説明をする
※事前に先の見通しを持てるよう次の行動を伝える
※わかりやすいように端的に説明をする
※忘れがちなので一緒に行動する
等の配慮で随分と集団生活にもなじめるようになっていきます。但し、学校という場は担任が1人で30人ほどの子供を見ているため、なかなかそのような個別的な配慮は難しいかもしれません。
保護者が学校と情報共有をしながら、子供の様子を聞いたり、逆に連絡帳などで伝えてもらうこともひとつの方法です。まずは発達検査や相談機関でどのように対処したらいいのかを相談しましょう。
発達検査・発達相談機関
各自治体によって発達検査や相談機関は若干変わってきますが、基本は自治体の福祉課や保健センター、児童相談所で相談に乗ってくれます。
札幌市内ではこのような児童の相談機関もあります。学校生活を含めての相談に乗ってくれます。
発達検査も行っている機関もありますので問い合わせてみてください
こちらは東京都調布市がYouTube配信で就学前の発達検査についてわかりやすく説明しています。
また、同じ発達障がいのおこさんをお持ちの保護者の方で、ペアレントトレーニングという研修を受けた方が相談に乗ってくれるところもあります。
クローバーのように各都市でも色々な親の会や相談者がいます。
自治体の敷居が高いと感じている保護者もいます。そんな時は身近にいる相談者にまずは相談してみることもいいと思います。
入学後、今はまだお子さんも保護者も慣れない毎日で不安なことも多いかもしれません。まずはお子さんが学校に慣れるまでの1,2か月は出来ない事や分からない事があっても当然と思い、暖かく見守っていくことも必要です。