ヤングケアラーが孤立しやすい理由
ヤングケアラー支援に国や自治体が乗り出し始めて、ようやく介護が大人だけの問題ではないという実態の把握をする体制が構築されつつあります。しかし、どの専門家も
ヤングケアラーは大人と違い孤立しやすい
と発言しています。
どのような支援が必要なのか?介護の専門家であるケアマネージャーや、ケースワーカーですらも、過去の経験でも若い世代が家族の介護を担っているという所を問題視してこなかったために、その対策や支援方法などに頭を抱えています。
私もまた、高校1年生の時に母がパーキンソン病になりそこから32年と言う長きにわたり、母の介護が当たり前のように生活の中心にありました。身体介護よりも、精神的な疾患もあったであろう母の心のサポートが何より辛く、ただただサンドバックのように、母からの愚痴や暴言、妄想を受け止めていました。
※家族の問題
※家や家族の手伝いをすることは当たり前
※女の子である母の世話をするのは私しかいない
そんなことを父にも母にも言われ、ある意味『洗脳化』されていったところもあるかと思います。(言葉は悪いですが・・・)
こんな私の経験や、メディアなどが調査した経験者の話から、ヤングケアラーは大人と違い、助けを求める場所や人、介護の制度を知らないなどから、孤立すしやすいと思われます。
※助けを求めることは恥ずかしい事
※どの家庭にもある普通の事
※介護はどの家族でもありうること
※誰にも言ってはいけない事
※恥ずかしいこと
特に『誰にも言ってはいけない事』は、子供であるがゆえに、家族からそのように念を押されて、言えない、言ってはいけない、と子供ながらに家族の言葉に従っているケースが多くあるのです。
子どもたちのヘルプが無ければ、当然ながら、ヤングケアラーを抱えている家族の問題は明るみには出ません。また、介護の支援が入っていても、子供が家庭の手伝いをしている程度にしか捉えられていない、というケースもあるのです。
学校側もヤングケアラーの実態を把握しにくい
ヤングケアラーと言う言葉の定義に当てはまる子供たちは家庭内でのどこからどこまでの家事や介護を担っていることを言うのか?また、どの年齢からヤングケアラーがいるのかも教育側は把握しにくいという現状の問題もあります。
この調査では、中学生が高校生を上回るという結果が出ています。相談したことがあるか?の回答には、6割以上の子どもたちが相談したことがないと回答し、その理由の多くは、『誰かに相談するほどの悩みでもないから』や、『相談しても現状は変わらないから』と答えています。介護や福祉の制度を知らない事や、今の生活が当たり前で大した問題とも思わないという心の麻痺もあるのです。
あの頃の私もこのようなアンケートを書いたら、同じような回答をしていると思いました。私自身も物心ついた時から、母は病弱で、洗濯などのちょっとした手伝いを父や手伝いに来てくれていた叔母と一緒にしたり、小学校低学年には簡単な料理もしていました。買い物は3歳頃から近所の市場に行かされていましたし、それが当たり前の生活だったのです。そうして育ってきた環境に違和感などありませんでした。
朝母が寝込んで起きてこない日は、父が会社と自宅を行き来して家事を担いながら私もまた手伝っていたのです。なので、母がパーキンソン病になっても、我が家の生活はほとんど変わりなく、体調が悪い日が増えた母の世話を多くするようになった程度でした。
このようなアンケート調査を受け、教育側では驚きの声も上がっています。
どうにか支援に繋げい、子供らしい生活を保障してあげたいと、国も有識者会議を設けるなどの支援策を構築しつつあります。
このプロジェクトは、介護、教育、医療、福祉の専門家から成り立っています。ヤングケアラー支援には必須の教育が加わっていることで、子供たちの実態が把握しやすくなるといいのですが・・・
学校の中で担任や周囲の大人に、自分の家庭の事を話す機会などはほとんどないと思うことから教育側が何らかの策を講じてヤングケアラーの実態把握に積極的に取り組んでいってほしいと思います。
教育機関が、ヤングケアラー問題を家族間の問題、介護分野の問題と捉えればヤングケアラー支援はほんの一部の家庭にしか行き届きません。一番身近な教育が先頭を切ってヤングケアラー支援に乗り出してくれれば実態の把握の課題も少しずつ解消されていくのではないでしょうか。教育とヤングケアラー問題は切っても切れないほど密接にかかわっている機関だと感じています。
孤立させない支援をするには
先にも述べたように、ヤングケアラー支援は、大人とは違いその実態は見えにくい傾向があります。家族のために出来ることをすることが家庭の中で当たり前になって育ってきた背景が大きいこともひとつです。また、ヤングケアラーと言う言葉や家族の介護を担っている子供たちがいることの世間の周知や理解もまだまだと考えられます。それは家族だから、と言う当たり前のような古き良き時代の日本の習慣が色濃く残されていることも一因ではないでしょうか?そして、家庭の中と言う密室なプライベートな空間を外には見せてはいけない、そんあ傾向もあるようです。
親戚づきあいが盛んで、近所との付き合いも当たり前のようにあった昭和の時代では、成り立った家族介護かもしれません。しかし、核家族化が進み、近隣との付き合いすら希薄になっているこの時代に、家族だけで抱えるにはあまりにも過酷すぎます。中にはひとり親家庭や、親戚とは疎遠で、家族だけで生きている家庭もあります。そんな中、ヤングケアラーが他の家族の代わりに介護や家の事を担うことはあまりにも責任重大ではないでしょうか。
私も相談支援専門員として、障がいを抱えるご家族の支援をさせていただいていますが、その中にもヤングケアラーは少なからずいます。その介護を担う子供たちが少しでも普通の生活を送れるように、福祉サービスを増やしたり、他の支援へ繋げることも私たちの仕事でもあります。ヤングケアラーとは気づかずに家族の介護を担っている子供たちへの配慮や支援を見落としてしまうことも、正直ゼロとは言えないのです。
ただ、介護を担う家族の支援までに手が回りにくいという現状もあります。だからこそ、他の機関や他の専門職との連携は必須となってくるかもしれません。
介護保険などのサービスの見直しも今までは、介護者への支援が中心でしたが、介護する側の支援も何らかの形で入れる必要があると思われます。私が考えるヤングケアラー支援で今後サービスなどの変更を検討するべき事項をまとめてみました。
〇介護保険などの福祉サービスは、介護を受ける人のためのサービスだったが、家族の事情によっては、家族のために家事援助などを行うことも検討する。
〇学校などの教育の場でヤングケアラーの心のケアも含めたソーシャルワーカー等の専門職を配置し相談に応じる体制を作る。
〇家族のケアなどで、学校を休みがちだったり、成績が振るわない等、進級や進学に大きく影響する場合は、何らかの学業でのサポートや措置を講じる。
〇親が介護が必要なケースに関しては福祉などの専門家を交え、会議や面談などで情報を共有し家庭の全体像を常に把握しながら連携を行う。
国や自治体によっては、学校でソーシャルワーカーなどが介入し、ヤングケアラーの実態を把握することにすでに取り組んでいる自治体もあります。
また、これ以外にももっと必要なヤングケアラー支援も沢山あると考えられます。ヤングケアラーたちは孤立している感もなく、これが当たり前、と思っている子供たちも少なくないということです。その孤立している感がない事や、自分を犠牲にしてまで家族のために頑張っているという意識を持つことがないまま、現状の生活を続けていることに、少しでも支援の手を差し伸べることが出来る方法を模索しなくてはいけないのではないでしょうか?
孤立しないためには、自分の人生と家族の人生を分けて考えられるようになること
では、どの時点で気づくのか・・・
ヤングケアラー支援は、少しでも早い段階で支援が必要と考えます。それは、大事な成長期や思春期の時に、
≪自分を大事にして生きていくこと・家族のためではなく自分のための人生であること≫
に気づく必要があるからです。
それはなぜか???
大人になって介護している家族が亡くなった後に、その子供の人生に何が残っているかと言う現実を突きつけられた人が沢山いるのです。
これらのサイトは、大人になった時に、家族のために自分を犠牲にして介護に生きてきた大人たちの声です。
支援する福祉側も、家族の現状をもっと把握すべきでした。
私もまた、自分の人生を母に捧げて生きてきた1人です。結婚しても大学に入学しても、常に母の介護は切っても切り離せませんでした。逃げても逃げても追いかけてくる、そんな感じでした。
母が亡くなる最期まで、母中心の生活だったのです。
でも私はまだ恵まれた環境だったのかもしれません。学校にも行けて、大学にも進学させてもらえました。無理を通してでもやりたいことを主張し、させてもらえました。それは父と言うもう一人の介護する『仲間』がいたからかもしれません。
母の思いは
あなたの人生は私のもの
と言う考えでした。
私が物質的に母の元を離れてもどこへでも母は精神的に追いかけてきました。
家族と自分を切り離して考えることがヤングケアラーはなかなかできません。そして、自分の事を優先することに罪悪感を感じたり、自分を後回しにしがちです。
あなたの人生はあなたのものです
家族の人生は家族のものです
そこであなたが自分を犠牲にしてまで家族のために尽くすことはあなたのこの先の人生を考えた時に何も残りません。
ヤングケアラーと言われる子供たちが社会から孤立しないためには、子供たちにもこのように伝えていく必要があります。そして、あなたに代わって家族のお世話をしてくれる人は沢山いるんだということも伝える必要もあるのです。