遠距離介護は親と自分の負担を軽減することが大切
今回の新型コロナウィルスの感染拡大で、遠距離介護をしている方にとって色々な不安があったことかと思います。
家に行きたくても外出自粛要請や県をまたいでの外出も自粛が出ていたことなどで遠距離介護者の心の負担は大きかったのかと思われます。
私は実家が同じ市内ですぐに行ける距離ではありましたが、仕事柄休業要請のない福祉職だったこともあり、自分が感染源になることを恐れて、父と約2か月ほど会うことを自粛しました。認知面の低下や、日々の体調などの心配はありましたが、幸いなことに訪問介護、訪問看護を利用しておりそれが救いではありました。
ヘルパーや看護師の訪問へ不安がなかったわけではありませんでしたが、最新の注意を払って感染予防に努めているだろうと信じることで利用を自粛することはしませんでした。
父は近所の親戚に住む体が不自由な叔母の家に毎日行って顔を見せることと、買い物は近所のコンビニか、小さなスーパーに行く程度でほとんど家で過ごしていたのですが、元々持病がいくつかあることで、私の心配は尽きませんでした。
近距離でもこの時期は会いに行きたくてもいけない状況・・・父の体調がとても気になり、毎日電話をして確認していたのです。
遠距離介護は家族とご本人の精神的な負担が大きくなります。負担を軽くすることで、遠距離でも安心してお互いが暮らせる環境つくりをしておくことが大切になってくるのです。
負担軽減、と聞くとやはり介護サービスになります。
まだ、親が元気という方にとっては、ピンとこない介護サービスですが、元気なうちに、介護サービスのことや、介護認定の取得について情報を得ておくことも、いざ介護が必要になった時にすぐに動くことが出来ます。
また、介護サービス以外にも、色々な選択肢を用意して親と話し合うことも大切です。
まだ私が結婚し出産したばかりの頃、母が自宅で転倒し、肩を骨折した時に、一気に病状が進行し介護度が進んだのです。当時は介護サービスも利用せず、まだ自力で出来ることも多かった母がそのケガをきっかけに、要介護3になってしまい、当時飛行機で移動しなければ会えないほどの距離に住んでいた私は、夫や夫の義両親の勧めから、母と父を私が住んでいる地域に呼び、同居する話が出ました。
しかし、母だけでなく、長年住み慣れた地域に住んでいた父にとって、全く知らない風土も違う地域に移り住むことは考えられないと言われました。
私には兄がいましたが、兄も遠方に住んでおり、さらに飛行機で移動しなければならない遠い地域に住んでいたため兄夫婦にも頼ることが出来なかったのです。
母がパーキンソン病になったと知った頃から、病状が悪化し、いつか全介護になることはわかってはいましたが、まさかこんな急に一気に全介護になるとは思ってもみませんでした。父の負担を考えると、訪問介護などの支援を使うべきとは思うものの、母はそれを一切拒否したので、利用するまでに数年もかかりました。
家族間で話し合う事や、お互いが無理なく遠距離でも介護が可能な状況を知っておくことで、お互いの負担を軽減することが出来るのです。
遠距離介護を続けるのか?それともお互いが近くに住み介護をするのか?
遠距離介護を決断するまでにも色々な問題を考えて準備をしなくてはいけません。
そんな、課題として挙げられるのは・・・
※ 親は住み慣れた土地の方が過ごしやすい・・・親はこれまで住んでいた土地で過ごす方が安心と考えるケースは多いと思います。子供のいる地域に行くことを決断することはよほどの勇気が必要でもあるのです。高齢者にとって環境が変わることは、様々なリスクも伴うからです。環境の変化についていくことが難しくなる高齢者・・・それによって認知機能が低下し家族の負担が逆に増えることも考えられます。高齢者のとっても環境が大きく変わることは心身にとって大きなリスクがあるのです。
※ 介護する家族にも社会的な立場や役割がある・・・介護する側も、親が住んでいる地域に戻るなどという選択もあります。親を介護する世代の子供たちは社会的にも管理職についているなど重要な立場にある方も少なくありません。また結婚して家族もいるなど今の生活を変えることが困難な状況にある方も多くいるという方も多いのです。
※ 遠距離介護のメリット、デメリット・・・転居しなくてよいことや介護サービスを利用しやすいこともあります。認知症だけでない脳疾患などのケースは入所の優先順位が上がることもあります。また、常に一緒にいるわけではないので、介護に対するストレスも少なく、冷静な目で親の心身の状況を把握しながら周囲に助けを求めることが出来るのがメリットと言えましょう。逆にデメリットとしては、通信費や規制の時の交通費などの費用がかかること、何より不安なのが、親に何かあった時にすぐには駆けつけることができないということは大きなデメリットかもしれません。
私は母の病状が進み、夫や義両親の勧めで同居もけんとうしましたが、両親が拒否したため私が夏や冬に長期的に帰省することで遠距離介護をすることにしました。
当時はまだ、我が子は保育園にいたことや、私自身も働いてはいましたが、パートで、私自身の状況を理解してくださる職場でもあったため、長期で帰省することが出来たのです。こんな職場はなかなかないですが、職場の理解も遠距離介護の重要なポイントとなります。今では、介護休暇などを擁している職場も多く、それを使うことで帰省することが出来る方もいますが、まだまだ浸透していないのが現状でもあります。
遠距離介護をうまくいかせるにはいくつかのことを抑えておくとよい
遠距離介護を円滑にいかせるにはいくつかのポイントを押さえておくといいでしょう。
① 家族間での話し合い・・・家族間での話し合いは何よりも遠距離介護をするうえで大切なことでしょうね。今は介護が必要ではない状態だとしても、万が一介護が必要になった時のことを今から話し合っておくことも大切です。近くに住むのか?遠距離を続けるのか?施設入所を考えるのか?など、細かいことまで話し合うことでいざという時に慌てることがないように準備しておきます。
② 日々の親の日常生活や交友関係を把握する・・・親の日常生活をある程度把握することで、いざ介護が必要になった時に、何に不自由を感じているのか?などがわかることもあります。また、親戚など以外での親の交友関係を聞いておきある程度の面識を得た上で親に何かあった時に連絡をさせてもらうことも検討しておいた方が良いでしょう。
③ 親のお金のこと・・・お金のことは家族間での話し合いの中で重要なこととなります。いざという時に必要なお金だけを別の通帳を作って置き、その場所や暗証番号などを子供が把握するなど、何らかの手立てをきちんと話し合っておくことが大切です。また、認知症などになると悪徳商法や振り込み詐欺などに引っかかることもあります。そんな時のためにも、印鑑などの貴重品も把握しておく必要もあるのです。お金のことは把握するだけでなく、管理するのを誰にするのか?必要な金額を常に家族間で共有するなど後々家族間でのお金のトラブルにならないようにきちんと取り決めをした方が良いでしょう。
④ 介護にかかる費用の把握・・・介護サービスを受けるまでの手続きなども家族が担わなければいけません。そして、毎月にかかる介護サービスの費用がおおよそどのくらいかも把握しておく必要があります。ケアマネや介護事業所の管理者などと情報を共有することも大切になるでしょう。
⑤ 周囲の頼れる人やかかりつけ医との連携・・・遠距離介護においては周囲の協力なしでは成り立たないと言っても過言ではありません。介護の事業所やかかりつけ医とも電話などで常に親の病状や生活の様子などを聞きながら親が孤独にならないような手立てを考えておく必要があります。また、介護保険を利用するほどではない段階からも、近所の人や、親の友人などと帰省のたびに交流しさりげなく頼める人には頼んでおくことも大切になります。
これらのポイントを押さえながら、親の周囲に見守ってくれる人を増やすことが、遠距離介護を成功させるポイントとなります。
おわりに
私は遠距離介護の中で、長期で帰省できると言ったメリットがありました。
母は周囲に頼ることが嫌いだったために、父の負担がとても大きく、それが心配ではありました。母がもっと近所の親戚などを頼ったり、遠距離介護をしている頃から介護サービスを使えていたら、と、思うこともありました。それは、父が体調不良で何度か入院したこともあったからです。
遠距離介護は家族観の話し合いが大切とかきましたが、我が家の場合は、母は私にそばに置てほしかったのです。しかし、呼び寄せる選択肢はなく、かといって当時は結婚していて夫は実家の会社を継いでいたので帰るに帰れなかったのです。それは母もさすがにわがままは言えず、長期の規制で我慢していましたが・・・
今や介護は色々な選択肢が増えました、が、家族の負担は変わらないというのが現状かもしれません。施設に入所したくてもすぐには出来ず、何年も待たされたり、訪問介護や通所介護も色々なサービス体制などは充実しましたが、核家族化が進む日本では介護負担は変わりません。
今や介護はロボットも参入しています。そんな孤独な遠距離介護に使いたいサービスをいくつか紹介しますね。
・見守りサービス・・・自治体により安否確認サービスや配食サービス、企業によるセンサー型の見守りサービス、など様々な見守りサービスがあります。カメラを設置して、携帯で見ることが出来るものも販売されていますが、親のプライバシー問題も出てくるでしょう。
・航空会社の介護帰省割引・・・頻繁に帰省する人にはぜひ利用することをお勧めしたいサービスです。利用できる条件は、非介護者が二親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者など色々と航空会社によって違います。各航空会社に問い合わせてみてください。
・コミュニケーションロボット・・・今や介護施設でも取り入れているところも出てきた介護ロボットです。簡単な会話だけでなく高齢者向けのレクレーションも行ってくれます。ただ、高額になるので、現実的ではないという声もあります。
以上のようなサービスや介護アイテムを利用しつつ、お互いに安心できる遠距離介護を進めていけるといいですね。