高齢者の紙おむつ使用はどのタイミングか?
介護において排せつ介助は大切なテーマとなります。
排せつの自立はご本人の尊厳を一番大切にしなくてはならないことでもあります。介護の中でご本人が一番気にされるのが排せつのこと。
意図せず、失敗をしてしまうことにショックを受ける方も少なくありません。私の母は最期までおむつを拒否し続け、意識が混濁している中でも看護師が排せつ介助に来ると、手を横に振って
おむつはやめて!
と訴えていました。無意識なのか?意識があってやったのかはわかりませんでしたが、亡くなる数日前までそんな仕草を毎回していたのです。母にとって、紙おむつは屈辱的と思っていたことは、元気なうちから知っていたので、最期までその思いは変わらなかったのかもしれません。
排せつ介助で紙おむつを使用するタイミングはどうしたらいいのでしょうか?
ご家族が紙おむつを希望してもご本人が抵抗を示される場合はどうしたらいいのでしょうか?
尿漏れや失禁に対して不安を感じていらっしゃる場合には、まずは尿漏れパットなどから使用することで抵抗感を徐々になくしていくこともひとつの方法です。
尿漏れは特に、加齢に伴い誰もが経験することだということを受け入れてもらえるよう、ご本人のプライドを傷つけない方法で理解してもらいます。トイレに行く度にパッド交換をしていただくことで、加齢に伴う自然現象として、少しずつ受け入れてもらうといいでしょう。
私の母も、初めは生理用のナプキンを使用し、尿漏れを受け入れていきました。徐々に介護用のパッドに移行し、母自身が尿漏れに抵抗がないようにしていったのです。
しかし、尿失禁には激しく動揺していました。
高齢者の自尊心を傷つけないようにおむつを選択するには?
トイレの失敗は誰にでも起こりえることとはいえ、やはり失敗はご本人にとっては不本意なことです。家族や誰かの手を煩わせることは嫌だけど、紙おむつも抵抗がある・・・先ほどにも述べたように、私の母のように受け入れがたい場合には、初めから紙おむつを提案するのではなく、パットなどから尿漏れを予防する意味で使用することをさりげなく提案するのも方法です。
特に女性は生理を経験しているため、小さなパットの使用は抵抗なく使える方も多いのです。男性の場合にも、パッドを使用することで下着と一緒に使用できるメリットを説明することで使用する方も多くいらっしゃいます。
パットから使用することで、いきなりオムツやリハビリパンツという抵抗感を少なくすることは高齢者の自尊心を傷つけないためでなく、安心感にもつながります。
ご本人と相談しながらどのタイプがいいのかを選択することも抵抗感を軽減するためには必要なことでもあります。また、表現の仕方にも気を付けるといいでしょう。
紙おむつという表現をすることで、抵抗感が強くなる場合もありますが、紙の下着、使い捨ての下着という表現をすることで使ってみようかな、という思いにもつながることもあるのです。
【オムツのタイプ】
・パンツ型・・・下着と同様に脱ぎ気ができるパンツタイプのものです。排泄の自立を促すためにも、色々なタイプが売られています。服の上から見ても履いているという感じが見えない薄型のタイプや、尿をしっかり吸収し、漏れをしっかり防ぐタイプなど様々です。また、中にパッドと一緒に使用することも出来ます。
・テープ型・・・両脇をテープで止めるタイプで、寝たきりの方や、尿量が多くパンツタイプでは漏れてしまう方に適しています。両脇をテープで調整できますので、寝ているときの横漏れを防ぎます。こちらも、パッドと一緒に使用することが出来ます。
・2WAYタイプ・・・パンツ型、オムツ型の両方で使用できるタイプです。昼と夜に分けて使うことできます。
・尿取りパッド・・・パンツ型やオムツ型の中に入れて使用するものです。テープがついていて、下着に着けることも出来ます。大きさや暑さなどで、吸収する回数が様々なので用途に応じて使い分けることも出来ます。持ち運びにもコンパクトです。
オムツの選び方と注意点
オムツはサイズに合ったものを選びましょう。サイズが合っていないと、漏れの原因になることは勿論の事、褥瘡の原因にもなってしまいます。素材も様々で肌に合った柔らかい素材のものを選びましょう。ドラッグストアなどでは、見本として触ってみることができます。収縮性や肌さわりをしっかり確認して購入しましょう。また、パッドなどは昼用と夜用途に使い分けることで、漏れやムレを防ぐことが出来ます。特に夏場が湿気がこもりやすく、肌トラブル原因になりかねませんので、通気性の良いものを使います。
機能性を重視するだけでなく、やはりご本人の好みを尊重した選び方もしていきます。当然ですが、ご本人が使用してみて使い心地が一番わかるのです。また、先にも書いたように抵抗感がある方にはパッドから使用することをお勧めしつつ、ステップを踏みながら使用することをお勧めします。あくまで選択されるのはご本人だということを忘れないようにしたいものですね。
よく、オムツや尿取りパッドを重ね使いする方がいますが、これは衛生上よくないので避けましょう。どうしても漏れてしまうなどのトラブルがあるようでしたら、もしかするとそのオムツはあっていないのかもしれません。また、オムツ交換する時間がなかなか取れなくて漏れないために重ね使いをする場合もありますが、なるべく定期的に交換するようにしましょう。
清潔を保ち、衛生的にいつもきれいなおむつやパッドを使用しましょう。
おわりに
過去に施設で働いていた時、認知症を患っていた女性の方がいらっしゃいました。その方は膝も悪く、歩くのも困難で、尿失禁も度々あったのです。しかし、ご本人が杖のしようと、オムツの使用を激しく拒否してしまうことから、ご家族は使用せず、下着を使用させてくださいと言われました。歩行も転倒の恐れがあるにも関わらず、ご本人は杖と言う意識もなく、逆に杖を持たせると、振り回して威嚇するので持たせることすらできませんでした。
その方は毎回トイレ誘導をこまめにすることで、何回かに1回程度の失禁で済んでいましたが、認知症が進行すると、トイレ誘導すら暴れて拒否をしてしまいました。お元気な時はとてもおしゃれな方だったようで、下着にも気を使われていたようでした。そのまま施設でもおしゃれな下着を持参されていました。
あおの方が、初期の認知症になったときに、ご家族にこうお話しされたそうです。
絶対にオムツは使わないで!パッドもイヤ!
認知症が進行してからもその記憶は女性に中で残り続けたのでしょう。ご家族がオムツを使用させようとすると激しく抵抗し、暴力をふるったそうです。
その後認知症が進み、ご家族のご負担が大きくなったことと、持病が悪化されたことで、入院、入所となりお会いすることが無くなったのですが、私の母のように最期までオムツを拒否されたと風のうわさで聞きました。
介護の実習で紙おむつを使用する実習があります。服の上から交代で排泄介助の実習をするのですが、服の受けからでも、締め付け感や、ゴワゴワ感、ムレる感じがあり、嫌な感触がありました。その時思ったのです。
自分が今後、高齢になりこれを使用することになったら、どんな気持ちになるだろう?
それを考えると、少々憂鬱な気分でした。
もしかすると、母は過去に椎間板ヘルニアにオペをして、2週間ほど動けなかった時に致し方なく紙おむつを使用していたことがあったのですが、そのことを思い出してオムツを拒否し続けたのかもしれません。あの頃はまだ母は40代・・・屈辱的だと感じたのかもしれません。
排泄介助では必要不可欠なおむつやパッド・・・
介護する側のメリットだけでなく、使用する側の思いもくみ取りながら選んでいきたいものですね。